月別アーカイブ: 2025年5月

夏本番前に、6月を楽しむ綿薩摩

「春過ぎて夏来にけらし」・・・こんな穏やかな季節の往来とは少し無縁になりつつあるような昨今、お着物好きには季節を十分楽しむ前に猛暑到来!になりませんように。

6月のちょっと雨模様のヒンヤリ感を癒してくれるのが「綿薩摩」、肩に軽く、肌馴染みよい、まあこんな優しい布がまだ日本にはあったのね、と思える逸品です。麻上布にかわる前、秋の初めにも大活躍する、細〜い綿糸の織物です。

綿薩摩着物:88000円 25−05−09  身丈3尺9寸 裄1尺7寸5分

藍の亀甲絣、基本中の基本、一枚は必ず持ちたい綿薩摩に2本の帯を合わせました。

藍の亀甲綿薩摩に「大麻」の縞帯。きれいなコーラルピンク、ブルーの縞の可愛い名古屋帯。今は貴重な大麻ですから、多少のキズ、色変わりはご容赦ください。

麻の帯は盛夏に限らずお締めいただけると思います。

帯:132000円 長さ:10尺 24−06−25

朝顔に曲垣の名古屋帯

同じ綿薩摩に淡い緑地の染め帯を合わせました。帯は錦紗の単衣着物から作りました。現代では貴重な錦紗の優しい色合い、手触り、柔らか物にもお楽しみいただけます。

帯:44000円 25−05−08 長さ10尺

日々の着物

暦の上では衣替えの時期を迎えようとしています。

すでに単衣の着物を着て涼しく過ごし始めてしまうと、これから先にやってくる盛夏をどのように着物のやりくりをしようかと考えてしまいます。

ご紹介の着物は、銀通しで御簾を表現した着物地に、和歌が描かれた小紋です。

花の色は うつりにけりな いたづらに

我が身 世にふる ながめせしまに

古今和歌集におさめられた小野小町の歌が繰り返し書かれています。

「花」とくると古典では桜を表すようですが、「ながめせしまに」の長雨にかけてこれから訪れる梅雨の季節に着るのも素敵かもしれません。

人々との諸々のことを考えて物思いにふけっていたら、自分も色褪せてしまったよというような歌です。

平安時代の女流歌人としては評価が高く、そして美人であったであろうその女性の心情を思うと切ない気持ちにもなりますが、優雅な時代を生きた小野小町の歌を纏うのもまた粋な感じがします。

合わせた帯は、錦紗の単衣着物から帯に仕立て直しした朝顔の帯です。

御簾の中から朝顔を眺めていた情景のように合わせました。

優雅なこの時代の様子を思い浮かべながら装うのも楽しいです。

 

御簾に文字散らし文様の単衣付下  88,000円(税込) (着物23-05-34)

身丈:4尺1寸(約155.8cm)
裄:1尺7寸(約64.6cm)
袖丈:1尺3寸3分(約50.5cm)
袖巾:8寸5分(約32.2cm)
前巾:6寸3分(約23.9cm)
後巾:8寸2分(約31.2cm)

 

籬にアサガオの名古屋帯  44,000円(税込) (帯25-05-08)

長さ:1丈(約380cm)
帯巾:8寸(約30.4cm)

志村ふくみ作 輝くみどりの名古屋帯と袱紗

志村ふくみさんは昭和43(1968)年、近江八幡から京都・嵯峨に移り住み、この年“藍建て”を始められました。志村さんはこの年44歳、命がほとばしるような、瑞々しい躍動感あふるこの帯は、それから間もなくの頃の作品かと思われます。

苅安+藍は輝くような緑

梔子+藍はやや赤みを帯びた緑

が得られるとか。苅安+藍から発する、この帯からは、すくってもすくってもすくいきれないみどりの光が放たれているようです。

好ましい緑を得るためには、苅安を先に藍を後に染めるのだそうですが、そのためにも自身の藍甕を持ち藍建てをすることが必須であったようです。

藍建てをはじめるにあたっては、白洲正子の紹介により、藍染め絞り作家・片野元彦の指導を受けたそうです。

弾ける紬糸からは、真っ直ぐな意志が感じられます。織り糸も白洲正子のアドバイスによりそれ以前のものとは変えた、と言われています。

この帯は、いくつかのご縁により、志村さんと親交のあった方が白洲さんのお店「こうげい」で買われたそうです。願わくば、志村さんの紬に合わせてお召しいただきたいですね。

880,000円(税込)
帯25-05-15

長さ:9尺2寸(約349.6cm)格子
帯巾:8寸(約30.4cm)

 

志村ふくみ作「古帛紗」(こぶくさ)2点

珍しい志村さんの古帛紗のご紹介です。小さな布の中に「志村ふくみ」がぎゅっと詰まった、手の温かみが伝わってくる小品です。

 

1点は、美しい緑のぼかし、志村作品の中でも人気の高い色柄、もう1点はやさしい色合いの格子、どちらもおっとり、こっくりした趣の中に凛とした品良い袱紗に仕上がっています。

20~30年前の作品ではないかと思われます。

2点とも110,000円

あなたの“指ぬき”は誰ですか? 裁縫箱の中から

縫い物はどうも苦手、という方も、こんな可愛いお裁縫箱をご覧になったら、針を手にとってみようと思われませんか?

韓国ドラマでおなじみの朝鮮王朝の女性たちのお裁縫箱です。

布・物差し・ハサミ・糸・針・コテ・ヒノシ(アイロン)を裁縫の七つ道具というそうです。朝鮮の民話にこれらのうち何が一番裁縫の役に立つかを言い争う、というのがあります。結論はみんなそれぞれなくてはならないもの、仲良くしましょう、めでたし・・・となるようです。

7つ道具の中に「指ぬき」「針刺し」は含まれていません。なぜ? お裁縫箱の中にはちゃんと・・・

韓国、欧米では、指ぬきは、人差し指の先に爪型のものを付けます。日本では中指にリング型のものをはめますね。運針の仕方もだいぶ違います。真似しようと思いましたがなかなかうまくいきませんでした。

NHKで放映中の、フランスの人気ミステリードラマ『アストリッドとラファエル』のなかで、「私はあなたの羅針盤、あなたは私の指ぬき」と二人の関係を例えています。指ぬきー針の怖さ、痛みから守ってくれるもの、この場合は、針は世の中、外の世界ですが、確かに指ぬきはお裁縫には必需品ですね。

針刺し、ピンクッションは針を保存しておくのに欠かせないアイテム。朝鮮王朝の女性たちの携帯用お針セットはノリゲ(チョゴリの飾り)のようなふっくらした丸い形。その中には髪の毛が入っていて、針を入れ保護していたようです。日本でも昔ピンクッションの中には髪の毛をいれていました。

灯屋2銀座店では、「ピンクッション募金」として浦野理一の貴重な布で作ったピンクッションをたくさんご用意しています。皆様の温かいお心をお寄せいただければ幸いです。

日々の着物

夏が少しずつ近づいてきます。

単衣の季節を目前におすすめのコーディネートのご紹介です。

ご紹介の着物は、よくよく着込まれた柔らかい縞の単衣紬です。


紬のハリ感はなく体に沿って着心地の良い着物に、爽やかな色めの和更紗の帯を合わせました。

藍の色めが鮮やかに出ていて、美しい帯でこの季節に颯爽とした雰囲気でお召しいただけそうです。

変わり縞単衣着物  33,000円(税込)

身丈:4尺5分(約153.9㎝)

裄 :1尺7寸5分(約66.5㎝)

 

2色唐草文の和更紗名古屋帯.        88,000円(税込)   (帯24-11-32)

長さ:9尺8寸(約372.4cm)

帯巾:8寸(約30.4cm)

 

もう一つのコーディネートは、少し早めの夏大島の着物です。

襦袢を色付きのものにして先取りで夏大島を着るのも、暑さの厳しい昨今には便利で過ごしやすいです。

 

 

合わせた帯は、松原工房の作品の「のし」の型染めです。

木綿地の帯なので、寛容な季節に使えそうです。

100亀甲の夏大島.      66,000円(税込).   (着物24-08-05)

身丈:4尺(約152cm)
裄:1尺7寸5分(約66.5cm)
袖丈:1尺3寸(約49.4cm)
袖巾:8寸8分(約33.4cm)
前巾:6寸(約22.8cm)
後巾:7寸5分(約28.5cm)

 

木綿地 熨斗文様  110,000円(税込)      (松原名古屋帯-14)

長さ:9尺8寸(約372.4cm)
帯巾:8寸2分(約31.2cm)

 

松原工房の染めワザをお聞きする会

長年工房で研さんされていた三人のお弟子さんによる、トークイベントが開かれました。

中形の型紙や糊べら、彫刻刀などの制作用具をお持ちになり、店にある作品を参考に、具体的に「地白型」や「おっかけ」「縞」「格子」の染法を伺いました。

小紋で40回位の型置きを両面に、訪問着は70枚位の違う型を使う、など詳しく具体的な解説が続きました。

糊を敷く入門に始まり、空調のない仕事場の低い長板での長時間作業や天候との戦いなど、長編ドラマを見ているような勉強会でした。

 

続編は、江戸川区から工房の記録フィルムをお借りしての上映会を6月末に予定しています。

ご期待ください。

ご来場は仕立て上がりのお召し物でいらしてください。

お待ちしております。