志村ふくみ作 「朱格子」
志村21-12-07
銘あり
ご売約済み
身丈:4尺2寸(約159.6cm)
裄:1尺6寸8分(約63.8cm)
この朱格子は、1970代に京都で茜染めに没頭された頃、志村ふくみさんご自身が、朱に憑かれるように織ったと仰っている時期の作品かと思われます。
朱色は、自然からなる清らかな明るい光で纏う者を輝かせてくれます。
きれいに通った、抱き縞は、瑞々しい樹木と葉の緑。
土の色、水の色、夜空の群青色と繰り返される日々の自然に対する恩恵を表現しているかのようです。
裾に向かい、横段の間隔がわからないくらい少し密になり、夕陽のような濃い朱色が、現れます。
志村さんご自身も書かれていらっしゃるように織り人としてのテンションが、高まり、何物にも捕らわれず、意図のない中で行われるそうです。
さながら、志村さんご自身が、宇宙空間に浮かんでいるような愉しさでしょうね。
数えきれないたくさんの色で織られた朱格子は、色もさることながら、広げた時の布の音や感触、質のよい素晴らしい糸の艶に感動します。
ざぐり糸で織られた土のうねのような膨らみ、安堵するような素朴な糸味。
大切に育て上げられた繭からの賜り物で、今では、叶わないほどの上質な糸で織られています。
おおらかでやさしく、ひた向きな美しさの朱格子です。