インド布の旅2018 再びバナーラシーへ

バラナシサリーを選ぶ昨年のインド仕入れで出会ったマハラジャの黒いサリーが、我々を再びバナーラシーへと誘いました。

しかし現実はなかなかに厳しいもので、ホテルから続く、すばらしい(?)小径を数百メートル歩かなければ車に乗ることもできません。
車に乗っても人や動物優先でなかなか進まず、やっとのことでお店にたどり着いても、心ときめく出会いがそうそうあるわけではありません。

そこで翌日、去年マハラジャのサリーに出会った、あのファクトリーへと向かいました。
今回は、昨年いた当主の叔父さんが対応。

色々見て判った事は、我々の好みは店頭にあるような最近の物ではなく、屋敷の奥に長く眠っている宝物のような布だということ。
所が困った事に、この叔父さん、それらのサリーに対する愛惜の念が深すぎるのです。
虫食いあり、色焼けありの布なのですが、そこは売る者と買う者、両者ガップリ四つに組んで、長い戦いが始まりました。

選ばれたサリーお互いに物の価値が判っている、どちらもいい商売につなげたい。
相手の手中が判っている中での、10倍も違う希望価格を調整していかなくてはなりません。
こんな場合は、だんだん詰めて行ってお互いの真ん中を取るのですが、余りにも離れていて到達すべき金額が予想できない。

水を飲んだり、トイレに行ったり、庭に出たり。
最後に、お互いいくらだったら商売できるかで決めようと言われて、はっとしました。
なるべく安く買おうというのでなく、本当に欲しいのならいくらまでなら買えるのか、正直に口にした価格は、向こうの希望価格とはまだ相当違っていたのですが、それで良し、となりました。
1枚の布を手に入れるために、ほぼ2時間あまり…
そんな事が楽しくて面白いのです。

ホテルの宮廷舞踏家最後の夜は、少し気張って、リバーサイドのヘリテージパレスホテルという、260年前のマハラジャの邸宅跡のホテルに泊まりました。
4階まで吹き抜けの中庭の天井に、ドーム型のガラスの屋根が付いていて、ライトアップの中、音楽が響いてインドの古典舞踊が始まりました。

美しいサリーたちが舞っていました。