松原工房の夢……長板中形をまとって記録映像をお楽しみください

JR新小岩駅からバスで5、6分、江戸川区役所の近くに「江戸川区郷土資料室」があります。

江戸川区の歴史、暮らし、産業などの資料が展示されています。ここはまた1924年(大正13)以来、長板中形の工房として多くの作品を生み出した「松原染織工房」から程近いところでもあります。

資料室に所蔵されている「松原工房の仕事」を記録したDVD2点「長板中形」「平成の匠」を借用し、松原工房の仕事を愛する皆様にご鑑賞していただくことになりました。

長板中形がどのような過程で作られていくものか、それに携わった人々の働く姿、息遣いを映像として見ていただける貴重な機会であるといえましょう。

現在江戸川区には長板中形の工房はなく、同じ荒川(中川)沿いの少し上流葛飾区四つ木にあった清水幸太郎(松原工房の創業者=人間国宝であった松原定吉と同時に1955年「長板中形」の人間国宝に認定された)の工房もいまはありません。

現在、清水幸太郎の技法を伝えているのは葛飾区の江戸小紋の人間国宝、小宮康助・康孝・康正三代の工房ということです。

郷土資料室には、松原工房の作品2点が常設展示されています。

松原工房が後継者がなく閉じることになった時、使われていた道具類、作品の一部が江戸川区に寄贈されているそうです。2026年秋〜冬頃、江戸川区役所移転に伴い、資料室も移転し、新オープンの企画として、これらの資料が展示されるということです。

資料室の学芸員の方は今も松原工房の着物・帯が皆様にこんなに愛されていることに驚かれていました。

松原工房は閉じられましたが、そこで学んだ方々は多く、その技は形を変えて伝承されてゆくものと思われます。松原家の3代に渡る思いが結晶した「長板中形」を時代を超えて残していただけたら、と念じます。