三代を着継ぐ−−幕末明治の着物の魅力

新宿区を流れる妙正寺川近隣(JR高田の馬場近く)は、この川のきれいな水を、反物の仕上げに使い、かつて染工場が繁栄したところです。現在も新宿区の後押しもあり、新宿区の地場産業として、従来の工場に加えて、体験型の新しい染工場が営業しています。

その一つ「染の里おちあい」で知人所蔵の、幕末明治の着物を展示していると聞き、のぞいてみました。

紫の大きな矢絣の銘仙を明治〜昭和三代の女性が着ています。今も着用可能な布の強さ、デザインに驚きます。

知人の実家は江戸の御家人—将軍お目見え以下の直参の武士の家で、高祖母は幕末十四代将軍家茂に御台所として降嫁した和宮の大奥に、奥女中として仕えたお人であったそうです(「伊織」という名を頂戴し、当時大奥で身の回りの品を保管するのに使った名入り黒塗りの箱なども所蔵している)。

幕末明治の江戸小紋を現代に甦らせた着物、羽織、小物は先日の「こうげいを探る」展でご紹介し、大好評でしたが、ここでも同時期の江戸小紋2点も展示され、どちらも着用可能です。濃い鼠に小桜と鮫、大きな家紋、どちらも一見地味ですが、羽織ってみると、底光のする美しさ!さすが関東大震災、太平洋戦争の戦火をくぐって生き残った“強者”、あらためて当時の糸の強さ、染の良さが感じられます。

その他の着物を2点ご紹介しておきます。

上は五つ紋の二枚襲手書き友禅。乱菊模様は袖だけにあり、裾にはない。袴着用のための着物。

下は明治後期縮緬の単衣。17歳くらいの時のもの。