小宮染色工場訪問記

小宮染色工場

先日、小宮染色工場を見学させていただいた時の様子をご紹介したいと思います。

灯屋2では小宮さんの江戸小紋を扱う事もあり、シミ抜きや洗張をお願いするうちにご縁が出来まして見学をさせていただける事になりました。
工房は昔ながらの土間の作業場で、天井には張り板が整然と並べられています。
正に、職人さんの聖域という感じです。私たちが見学したときはクーラーも入れていただいて、窓からの光も差し込む快適な工房といった感じでしたが、実際は湿度90%、真っ暗の工房内で裸電球の灯で手元だけを照らし、夏は噴き出す汗と闘いながら作業をなさっているそうです。
主に説明していただいたのは小宮康正さん。
江戸小紋の型を合わせていく事が難しいのかと思いがちですが、型を合わせていくのはそれほど難しいわけではないそうです。


小宮康孝さんそれよりも1反(約13m)を長さを力加減を均等に型づけしていく方が難しいそうです。
江戸小紋というと、型づけのイメージが強いのですが、それだけではない作業が沢山ある事に驚きました。
今では染めの技術は科学的に証明できると思いますが、昔は経験と感覚、それこそ五感やそれ以外の感覚を研ぎ澄まして行われる作業なのでしょう。

その後、小宮康孝さんの染めに関するお話を伺いました。
染料の研究を長年重ねてきて、色ヤケしない、色落ちしない染料に辿りついたそうです。
小宮さんの江戸小紋は染めが良いのでシミなどがついてシミ抜きをしても、元々の江戸小紋の染めは落ちないという事です。


染色風景たとえて言うと、腕の悪いシミ抜き屋さんが作業してもシミだけが落ちるそうです。
色々な布を見せて説明をしていただきましたが、どれも美しく素晴らしいものでした。
越後上布に染めた布は本当に美しく、皆写真を撮ったほど。
小宮さんは、職人である以前に、物を見る目が素晴らしいのでしょう。
自然界の中の美しい物、それも人が気に留めない物でも見出す力のある方なのだと思います。

物の中に存在する美しさを見いだし、それを美しいと思える心のある方なのだと思います。
小宮さん曰く、「美しい物は自ら輝いている。」と。
小宮さん自身が輝いているのだとスタッフ一同思ったに違いありません。

工房の片隅にオードリーへップバーンがこちらの工房を訪れた時のお写真がありました。
奥さん以外に手を握ったのは彼女だけだと言った笑顔も輝いていました。

小宮さんは後世になっても価値が下がらない物を残していきたいとおっしゃっていました。
着物は新品でない限りは“古着”という扱いになってしまします。
そのためにも、色落ち、色ヤケしない江戸小紋を作りだしたのでしょう。
いつまでも美しい色を放っている着物なんて本当に素敵ですね。

最後になりましたが、お忙しい中お時間を作っていただいた小宮染色工場の方々に御礼を申し上げます。
訪れたスタッフにとって、とても思いで深い1日となりました。

アトリエ担当 上杉