「インド布の旅レポート」 その5

ガンガーに注ぐ朝日
ガンガーに注ぐ朝日です。
混沌の1日の中のつかの間、神の使者として使わされてきているような光です。
気がつけば、この時間だけはあの喧騒が遠くなります。

さて、人の波、牛の糞、押し寄せるリキシャーをかき分けて向かった、とある工房。といっても我々からみれば大きなお屋敷。
そこの主人の風貌、話し方、生活ぶりに出会った途端、わたしの中で、突然インドがわかってしまいました。
そしてゆるりと出してくれた1枚のサリーに恋してしまいました。

ムガールが終わり、イギリスが入るまでのマハラジャたちの世界、そこから連綿と受け継がれてきた伝統。

色糸を見せる5代目主人
日本と全く違う異文化のなかで、トップ階級のためだけに、100年も最上の物を作り続けてきたその歴史が放つオーラを持っているのです。

はっきり言うと、何か病的なまでの凄さを感じてしまいました。
今まで、インドの更紗や織物を絶賛して、美術館でみたり仕事にもしてきましたが、何かその裏付けが取れたような時間でした。

話しはそれますが、15年ほど前、ウズベキスタンに行った折り、日本でいう古民家なるお宅に伺いました。
そこの主人は伝統衣装の収集家で、ムガール朝から続くというイスラム建築に普通に暮らしていて、100枚もある衣裳を惜しげもなく着ろ着ろと、着て踊れと。

奥さんと2人で踊りまくりましたけど、そんな時、言葉は通じなくても、それがどんなに好きなのかで、少々の自慢も込めて素晴らしい一体感が湧くのですね。
その時も、そのご夫婦の背後にある色々な重みをドッと感じて、伝統衣裳の持つ素晴らしさを実感したものでした。